プラスチックのリサイクルは3種類? それぞれが解決すべき課題もわかりやすく解説

エコマーク

「プラスチックのリサイクルってどう違うの?」「何が問題なの?」と疑問に思ったことはないでしょうか。プラスチックのリサイクルには大きく分けて3種類があります。それぞれ異なる特徴を持ち、解決すべき課題も存在します。

この記事では、プラスチックのリサイクルの種類を分かりやすく解説。それぞれの仕組みやメリット・デメリットを知り、プラスチックごみ問題との向き合い方を考えてみましょう。

日本のプラスチックリサイクルの現状

まずは日本のプラスチックのリサイクルがどのような状況になっているのか、わかりやすく解説していきます。

意外と低いリサイクル率

日本のプラスチックのリサイクル率は約87%(2022年のデータ)といわれていますが、その内訳はサーマルリサイクル(サーマルリカバリー)約62%、マテリアルリサイクル約22%、ケミカルリサイクル約3%です。

昔から積極的にリサイクルに取り組まれている古紙と金属(アルミ缶)のマテリアルリサイクル率は、それぞれ66.6%(2024年のデータ)、97.5%(2022年のデータ)です。また、欧州各国と比較すると、オランダやノルウェーではサーマルリサイクル(サーマルリカバリー)以外のリサイクル率44~45%(残りの約55%はサーマルリカバリー)を示しています。(2020年のデータ)

このように日本では、プラスチックのリサイクル率がまだまだ低い状況であることがうかがえます。

リサイクルのさらなる推進が必要

世界的にも地球温暖化や廃棄物の増加問題など、環境問題への意識が高まる中で、リサイクルの重要性は増しています。リサイクル率を上げるだけではなく、そのリサイクルの方法にも着目していくことが大切。

より環境に配慮したリサイクル方法を積極的に採用できるような取り組みが必要です。技術開発やインフラ整備はもちろんですが、リサイクルの起点となる消費者一人ひとりの意識をアップデートしていくことも重要です。

サーマルリサイクル(サーマルリカバリー)

日本で最も多く選択されているリサイクル方法ですが、最近ではリサイクルのカテゴリーに入れられない場合もあり、課題も多くあります。サーマルリサイクル(サーマルリカバリー)の基本や課題を詳しく解説しましょう。

特徴

サーマルリサイクル(サーマルリカバリー)とは、廃棄されたプラスチックを焼却し、その熱エネルギーを利用する方法です。廃棄物からエネルギーを回収できることが大きな特徴で、ごみ焼却施設の発電や冷暖房、温水として温浴施設や温水プールなどで利用されています。

リサイクルのカテゴリーに入らない場合もありますが、廃棄物を燃焼させるだけの方法であるため、他のリサイクル方法と比較して技術的なハードルが低いことも特徴の一つです。

解決すべき課題

サーマルリサイクル(サーマルリカバリー)の課題は、焼却による二酸化炭素の排出です。

現状、プラスチック製品の多くは石油を原料にしています。リサイクルと呼びながらも、結局は石油を燃やしてエネルギーを生産する旧来の消費方法とあまり違いはありません。そのため、サーマルリサイクルを本当に「リサイクル」と呼んで良いのか?という疑問もあります。

また、燃焼温度によっては有害物質を発生させるため、適切な焼却設備で燃やす必要があります。さらに、焼却灰には多くの有害物質が含まれることから、適切に管理された廃棄物処分場で処理しなければなりません。

今後は、サーマルリサイクル(サーマルリカバリー)で処理されるプラスチック廃棄物を減らし、後述するマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの割合を増やしていくことが重要といえるでしょう。

マテリアルリサイクル

サーマルリサイクル(サーマルリカバリー)の次に大きな比率を持つのがマテリアルリサイクルです。その特徴や課題をみていきましょう。

特徴

マテリアルリサイクルの最大の特徴は、廃棄物を新たな製品の原材料として活用することで、枯渇性資源の消費を抑制できる点です。また、高度な技術が必要なく、リサイクルに使用されるエネルギーが低い点もメリットといえます。

例えば、ペットボトルのリサイクルによって新たなペットボトルにしたり、服にしたりといった取り組みのことです。廃棄物の削減と同時に新たな資源の消費抑制を図ることで、環境負荷の低減に貢献できます。

解決すべき課題

マテリアルリサイクルの課題の一つとして、リサイクルされる廃棄物の品質の確保があげられます。

分別が不十分などの理由により、異物が混入している場合、リサイクル品の品質が低下してしまうことがあるのです。また、そういった分別などの工程が必須なため、追加コストがかかり、石油資源をもとにした素材よりも割高になる場合もあります。

リサイクル技術の向上やリサイクル素材の活用方法などが課題といわれています。

ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを原料レベルにまで戻すリサイクル方法であり、マテリアルリサイクルが持つ課題も解決しうるポテンシャルをもっています。 具体的な特徴について解説していきます。

特徴

ケミカルリサイクルは廃棄物を化学的に分解して、再び原材料とするリサイクル方法です。

マテリアルリサイクルとは異なり、品質が低下した廃棄物でも分子レベルに分解することで新たな化学製品の原料として再利用可能。より高度なリサイクル技術といえます。

例えば、廃プラスチックを分解して石油由来の製品の原料に戻したり、繊維製品を分解して新たな繊維の原料にしたりする技術が開発されています。今までのマテリアルリサイクルでは難しかった廃棄物の有効活用が期待されています。

ちなみに、帝人フロンティアの「エコペット」は、ケミカルリサイクルおよびマテリアルリサイクルを用いて生まれ変わらせた原料を使用した合成繊維です。

解決すべき課題

ケミカルリサイクルの現状の課題として、高度な技術が必要であること、エネルギー消費量やCO2排出量がマテリアルリサイクルよりも多い傾向があることがあげられます。

化学的な処理を行うための設備や、エネルギー使用量の多さ、工程の長さのために、マテリアルリサイクルと比較してコストが高くなる傾向にあります。今後は、効率的で導入ハードルの低い技術の開発が求められていくでしょう。

まとめ

この記事では、プラスチックのマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル(サーマルリカバリー)について解説しました。

それぞれの方法が、資源の有効活用や廃棄物削減に貢献する一方で、解決すべき課題も抱えています。プラスチックの適切な処理方法について、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

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