Interview

SUBU府川俊彦氏が語る、コラボするブランドに求める条件と、「エコペットⓇ×ベンベルグⓇ」の優れた機能性。

「誰も知らない冬のサンダル」をコンセプトに掲げ、秋冬に特化したサンダルをリリースするとともに、「ファッションとしての日用品を追求」し続けるブランド、SUBU。

まるでダウンのような暖かさと、足全体にフィットする4層構造のインソールが評判を呼ぶと同時に、人気ブランドや美術館とのコラボレーションも次々に実現。設立から10年を経て、ブランドとしての揺るぎない地位を確立した。

「秋冬のサンダル」という、挑戦的にも思えるコンセプトを継続してきた訳に加え、「エコペットⓇ×ベンベルグⓇ」を中綿に採用した理由などについて、SUBUのディレクションからデザイン、立ち上げ当時は生産管理も手がける、株式会社イデアポートの府川俊彦氏に話を聞いた。



ー秋冬のサンダルに特化するというブランドコンセプトは、今考えてもかなり挑戦的だったようにも思うのですが、このコンセプトに辿り着いた経緯をお教えください。

SUBUの立ち上げは2016年なのですが、その時から「誰も知らない冬のサンダル」というキャッチコピーでブランドを継続してきました。

その頃はストリートファッションとしてスポーツサンダルを夏に履くということが定着し始めた時期。肌寒くなった時期にも、靴下合わせでサンダルを履く方がいたり、ファーやボアなどを組み合わせたサンダルなどがリリースされ始めたりしていました。ただ、おそらく自分が知る限りは、「冬のサンダル」という明確なマーケットはなく、それに特化したブランドもなかったように思います。

そんな状況もあって、履くことで暖かいだけでなく、気持ちよく、リラックスできる。そんな豊かな時間を提供できたらという思いから、SUBUをスタートさせました。


ー人気ブランドとのコラボレーションも毎シーズン話題となりますが、コラボレーションはどのような形で行なっているのでしょうか?

BEAMSさんに声をかけて頂いたのをきっかけに、さまざまなブランドからコラボレーションしたいというお声がけを頂くようになりました。それぞれのコラボレーションがきっかけとなって、いろんな方面から認知してもらえるようになったのは非常にありがたいですね。ただ、どこかのブランドとのコラボがきっかけで爆発的に知名度が上がったというよりは、ブランドスタート時から10年かけてじわじわと、SUBUというブランドが認知されていったように思います。

上から時計回りに、A BATHING APE®、bPr BEAMS、COYSEIOとコラボレーションしたSUBU

基本的に、コラボレーションは先方からお声がけ頂くという形ですね。SUBUにはない機能性やデザインを実現できるブランドとコラボレーションするようにしています。

SUBUは、従来のEVAの一体成形で作られているコンフォートサンダルとも通常の靴とも全く違う、履き心地の真似できないプロダクトだからこそ、お声掛け頂いているのではないかと思っています。

SUBUの原点は、アウトソールの中にインソールを入れるという発想。この快適な履き心地は、アウトソールと厚さと硬さと反発係数がそれぞれ違う4枚のインソールを組み合わせて、接着剤を使わずに縫製を行うという形で実現しています。

ブランド立ち上げ当初は僕自身で素材を探しながら、ウレタンフォーム、硬質EVA、軟質EVAの組み合わせを何十通りも試して、現在のフットベッドの形に辿り着きました。さらに縫製も従来の靴作りとも違う特殊なものだったため、それを実現できる工場を探して、10件近くの工場と交渉を重ねましたね。

そうやって履き心地やルックス、そしてクオリティと価格のバランスをとりながら、現在のSUBUに辿り着いたんです。


ー環境に配慮したリサイクル素材を使用する、RE:というコレクションを立ち上げた理由と、その中綿に「エコペット」を採用された経緯をお教えください。

RE:はSUBUをスタートさせて7年目の頃に立ち上げたのですが、そのころSUBUの累計が100万足を超えて、社会的な責任を果たさなければいけないフェーズになってきているということを感じていたんです。

そのタイミングで、サステナブルファッションエキスポの第一回が開催されていて、そこで帝人フロンティアの「エコペット」担当の方にお話を伺ったんです。まず最初に、「エコペット」という名前がわかりやすくていいな、と思いましたね。ペットボトル等を原料としたエコな素材、ということを語らずとも伝えることができる。

さらに、「エコペット」にコットンから生まれた再生セルロース繊維である「ベンベルグ」を組み合わせることで、吸湿発熱効果という機能性もプラスすることもできる。素材感も機能性も十分満足できるクオリティだったため、採用することに決めました。

現在はこの「エコペットⓇ×ベンベルグⓇ」の中綿を使用しているのはRE:コレクションだけなのですが、通常の中綿よりも保温性を高めることができるため、価格の面でもう少しこなれてくれば、他の商品にも採用していきたいと考えています。


ーRE:コレクションでは、素材の80%以上にサスティナブルなものを採用しているのですね。

「エコペットⓇ×ベンベルグⓇ」の中綿を使っている以外にも、ソールにはヨーグルトの容器やキャップのフタなどを再利用したリサイクルポリスチレンが20%配合された素材を採用。さらにアウターには、リサイクル素材の含有量やサプライチェーンの追跡性などに関する国際的な第三者認証基準であるGRS認証を取得したファブリックや、再生が容易なパルプ素材、リサイクルレザーなどを使用しています。

上から、アッパーにパルプ素材を採用したRe:Paper、リサイクルレザーのRE:CROCODILE、Nangaとのコラボレーションモデル。いずれも「エコペットⓇ×ベンベルグⓇ」の中綿など、素材の80%以上にサスティナブルなものを採用している。


ーRE:コレクションの反響などはいかがですか?

国内外で非常に評価されているのを感じていますが、特にヨーロッパからの引き合いは多いですね。ビジネスにおいてだけでなく、一般的な方からも高い評価をされているのではないかと思います。


ーリサイクル素材を採用するにあたって、「もっとこんな素材感や機能性のものが欲しい」という要望などはありますか?

表面感に特徴のあるものなどがあれば、積極的に採用していきたいですね。例えば、RE:PAPERには紙素材のアッパーを採用しているのですが、寄せ書きしてプレゼントしたり、子供が落書きしたりという使い方などもできるんです。

この「紙素材で作って落書きしてもらう」という発想には、ちょっとしたエピソードがありまして。旅先の山梨でほうとうを食べていた際、店員の方が骨折されていて。そのギプスに寄せ書きされていたのがかっこいいな、と思って。そこから発想を得て、パルプ繊維というサスティナブルな素材を用いたSUBUを作ることになったんです。


ーSUBUブランドとしての今後の展望などはありますか?

ブランドをスタートしてからおよそ10年間、多くのお客様からもご支持を頂くとともに、さまざまなブランドと協業した結果、MoMA Design Storeとコラボレーションしてニューヨーク近代美術館に置いてもらったりするなど、どんどん夢が叶っていっている状況です。

左から、MoMA限定のSUBU×Yinka Ilori for MoMAと、ムンクの叫びがプリントされたオスロ国立美術館限定モデル。

SUBUの最終的な着地点、目標というのは、ファッションというよりもあくまで日用品。00サイズ(20cm~21.5cm)から4サイズ(30cm~31.5cm)まで展開しており、今後はさらに小さいキッズサイズにもチャレンジしていきたいと考えているんです。だから一家に一足を超えて、家族全員でこの快適な履き心地を楽しんで頂けたらと思っています。

さらに、冬に特化したこのフォーマットを作り上げることができたので、今後は夏向けのフォーマットにもチャレンジしていきたいと考えているんです。


ー「エコペット」に求めることなどがあれば、お教えください。

「エコペット」という名前がさらに一般化して、今以上にあらゆるものに活用してもらえればいいですよね。SUBUとしても、今後も「エコペット」を採用していくとともに、SDGs的な活動も一緒にやっていけたらと考えています。

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