リサイクルポリエステル繊維ってなに? 具体的なメリットや機能をわかりやすく解説

環境に配慮した製品選びが当たり前になりつつある現在、「リサイクルポリエステル繊維」という言葉を耳にする機会が増えてきました。ですが、具体的にどんな繊維なのか、普通のポリエステルとは何が違うのか、知らない人も多いのではないでしょうか。
この記事ではリサイクルポリエステル繊維の作られ方やメリット、選ばれる理由について深く掘り下げて解説します。
リサイクルポリエステル繊維の概要と生産方法
まずはリサイクルポリエステル繊維がどんなものなのか、詳しく解説します。
リサイクルポリエステルは使用済み製品が生まれ変わった繊維
リサイクルポリエステル繊維とは、使用済みのペットボトル、ポリエステル製品を製造する工程で発生する端材、または使用済みのポリエステル製品などをリサイクルして作られる繊維のことです。
従来のポリエステル繊維と比較して、リサイクルポリエステル繊維は新たな石油資源の使用を抑えつつ生産でき、さらに廃棄物削減にもつながる点が大きな特徴です。リサイクルポリエステル繊維の生産方法には、ケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルの2種類があります。
マテリアルリサイクルによる生産方法
マテリアルリサイクルは、廃棄物に粉砕・溶融などの物理的な処理を行い、新たな製品の原材料として再利用することを指します。
例えば、ペットボトルを粉砕・溶融して、繊維素材に生まれ変わらせるといったリサイクルができます。また、リサイクルに必要なエネルギーが、後述のケミカルリサイクルよりも比較的低いことも特徴の一つです。
マテリアルリサイクルについて、以下のコラムでも詳しく解説しているため、参考にしてみてください。
ケミカルリサイクルによる生産方法
ケミカルリサイクルは、廃棄物を化学的に分解して、再び原材料とするリサイクル方法です。
マテリアルリサイクルとは異なり、ケミカルリサイクルでは品質が低下した廃棄物でも分子レベルに分解することで、新たな繊維の原料として再生利用可能です。ケミカルリサイクルは、より高度なリサイクル技術であり、マテリアルリサイクルでは難しかった廃棄物の有効活用も期待されています。
マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの特徴を比較して整理すると以下のようになります。
生産方法 | 主な内容 | エネルギー消費量 | コスト | 品質 |
---|---|---|---|---|
マテリアルリサイクル |
ウエスや反毛
開繊して再紡績 不織布化 |
小さい | 低い | 悪い |
熱溶融による新たな繊維化 例)ペットボトル、工程端材 |
中程度 | 中程度 | 中程度 | |
ケミカルリサイクル | 廃棄物を分子レベルに分解し、新たな繊維化 | 大きい | 高い | 良い |
リサイクルポリエステル繊維のメリット
リサイクルポリエステル繊維が持つメリットを3つピックアップしました。それぞれについて解説します。
石油由来のポリエステルとほぼ同等の品質
リサイクルポリエステル繊維を作る2種類のリサイクル方法のうち、マテリアルリサイクルでは、不純物の混入や繰り返しリサイクルにより品質が低下する場合があります。
それでも、石油由来のポリエステル繊維と比較して大きく品質が劣るわけではありません。また、ケミカルリサイクルであれば、マテリアルリサイクルのような品質低下はほとんど無く、石油由来のポリエステル繊維と同等の品質を備えています。
省資源化と原料の安定調達
世界の石油の可採年数は約50年とされており、いずれは枯渇する可能性のある資源といえるでしょう(2020年のデータ)。廃棄物を原料とするリサイクルポリエステル繊維は、省資源化に貢献できます。
また、日本で使われる石油はほぼ輸入に頼っていることから、海外の情勢次第では調達が難しくなるリスクも考えられます。リサイクルポリエステル繊維は、調達リスクを回避できる素材というメリットもあるでしょう。
廃棄物の削減に貢献
1年間に廃棄されるプラスチックの量は、世界中で3億トン以上と試算されています(2019年のデータ)。世界人口が増え続けている中では、排出されるごみの量も年々増加しています。これらのごみ問題に対処するためにも、生産工程で出た廃棄される端材や使用済みのプラスチックを原料としたリサイクルポリエステル繊維の活用が望まれています。
帝人フロンティアの「エコペット」はリサイクルポリエステル繊維の一つです。使用済みペットボトルは、マテリアルリサイクル工程を経て再利用されます。また、従来廃棄されていたポリエステル繊維くずや衣料品は、ケミカルリサイクル工程を経て新たな繊維に生まれ変わります。
企業がリサイクルポリエステル繊維を選ぶ理由
環境や原料調達、廃棄物削減などへの対策としてメリットがあるリサイクルポリエステル繊維は、企業が採用するにあたってどのような利点があるのでしょうか。
詳しく解説します。
SDGsへの対応
2015年の国連サミットで採択されたSDGsは、今では私たちの身近な言葉になっています。
SDGs達成につながる取り組みを推進する企業も増えてきました。リサイクルポリエステル繊維は、上記で説明したように省資源化や廃棄物の削減などに貢献できる素材です。SDGsの目標でいえば、主に「12 つかう責任、つくる責任」の達成につながります。
ESG経営の評価向上
企業の経営においては、ESG経営による評価も大切なポイントです。
ESG経営とは、環境、社会、ガバナンスの要素を考慮して持続可能な成長を目指す経営方針のこと。従来の単純な金銭的な利益だけではなく、社会貢献により長期的な利益も得ることが主な目的です。リサイクルポリエステル繊維に関連した取り組みも、上記のメリットからESG経営の評価につながる素材といえます。
リサイクルポリエステル繊維は環境、品質、機能など複数の価値を持つ素材
リサイクルポリエステル繊維は、廃棄物問題や限りある石油資源の消費抑制などの面で環境に配慮できる素材です。
また、企業にとっては、リサイクルポリエステル繊維の活用で、SDGsへの対応やESG価値の向上にもつながります。環境配慮と素材自体の機能性を両立できるリサイクルポリエステル繊維は、私たちの未来をより豊かにできる素材といえるでしょう。