ごみをなくす「ゼロ・ウェイスト」とは? 新たな取り組み事例と実践方法

「ゼロ・ウェイスト」という言葉をご存じでしょうか。ゼロ・ウェイストは日本国内でもいくつかの自治体が推進するなど、広く注目されつつある考え方です。また、この考え方は地球環境に優しいだけでなく、暮らしをシンプルにし、本当に必要なものは何かを問い直すきっかけにもなります。
本記事では、ゼロ・ウェイストの基本的な考え方から、誰でも無理なく始められる具体的な実践方法までを詳しくご紹介します。
ゼロ・ウェイストとは
まずは「ゼロ・ウェイスト」の定義や関係する言葉を整理してみましょう。
ゼロ・ウェイストの定義
「ウェイスト(waste)」とは、「無駄」や「浪費」、「屑」などを意味する英単語です。
そのため、「ゼロ・ウェイスト(zero waste)」とは、無駄や浪費をなくして、廃棄物を出さない活動や考え方のことを指します。今までも廃棄物を「減らす」取り組みはありましたが、ゼロ・ウェイストはより高い目標といえます。
例えば、廃棄物を減らした上でどうしても出てしまう廃棄物を、「資源」として捉え直すことも一つの大切な考え方でしょう。
ゼロ・ウェイストと5R
ゼロ・ウェイストを実現していく上で、5Rの考え方が関係しています。5Rとは、リフューズ(Refuse,拒否する)、リデュース(Reduce,減らす)、リユース(Reuse,再使用)、リペア(Repair,修理)、リサイクル(Recycle,再生利用)の頭文字をとった言葉です。
リフューズ、リデュースで廃棄物の元を減らし、リユースとリペアで製品を大切に長く使用し、それでも出てしまう廃棄物をリサイクルで再資源化する活動といえます。5Rの活動を高いレベルかつ広い範囲で実施できれば、ゼロ・ウェイストの実現に近づくでしょう。
ゼロ・ウェイストが求められる背景
ゼロ・ウェイストが求められる背景には、世界規模で深刻化する環境問題があります。例えば、自然環境中に廃棄されるプラスチックによる汚染、天然資源の枯渇、増え続ける廃棄物の処理スペースなどの問題が深刻化する一方で、私たちの社会が持続的に続いていくためには、これらの問題を解決していかなければなりません。
ゼロ・ウェイストはそのための方法の一つといえるでしょう。
日本国内のゼロ・ウェイスト推進事例
実は20年以上前から、日本国内でもゼロ・ウェイストを推進する事例があります。代表的な事例をピックアップしてご紹介しましょう。
徳島県上勝町のゼロ・ウェイスト宣言
徳島県上勝町は、2003年に日本国内で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った自治体です。
- 地球を汚さない人づくりに努めます。
- ごみの再利用・再資源化を進め、2020年までに焼却・埋め立て処分をなくす最善の努力をします。
- 地球環境をよくするため世界中に多くの仲間をつくります!
この宣言以降、同町ではごみ収集を行わず、各家庭における生ごみのたい肥化や缶や瓶資源のリサイクルなどを推進しています。また、この宣言を実現する上で町民はゼロ・ウェイストセンターで自ら13種類45分別を行っていることも特徴の一つです。日本で「ゼロ・ウェイスト」が広がる先駆けとなった事例といえるでしょう。
福岡県大木町のもったいない宣言
福岡県大木町は、徳島県上勝町に続いて、日本で2番目のゼロ・ウェイスト宣言である「大木町もったいない宣言」を2008年に採択しました。
- 先人の暮らしの知恵に学び、「もったいない」の心を育て、無駄のない町の暮らしを創造します。
- もともとは貴重な資源である「ごみ」の再資源化を進め、2016年(平成28年)度までに、「ごみ」の焼却・埋立て処分をしない町を目指します。
- 大木町は、地球上の小さな小さな町ではありますが、地球の一員としての志を持ち、同じ志を持つ世界中の人々と手をつなぎ、持続可能なまちづくりを進めます。
同町では、特に町内から回収された生ごみや汚泥などを、メタン発酵槽によりエネルギー資源や肥料として活用しています。そのほかにも複数の取り組みを行うことで、可燃ごみの約60%削減、CO2排出量の73%削減などを達成しています。
ゼロ・ウェイストを生活に取り入れるアイデア
私たちがゼロ・ウェイストに取り組むためには、具体的にどんな方法があるでしょうか。身近なところから始められるアイデアを3つご紹介します。
分別ルールが徹底できるアイデア
ゼロ・ウェイストを実現する中で、どうしても出てしまう廃棄物を「資源」として活かすためには、徹底した「分別」が重要です。しかし、複雑な分別ルールでは取り組むハードルも上がってしまいます。
そこで実践したいのが、「分別ルールの見える化」です。分別種類ごとの箱や袋を用意して整然とさせた上で、写真付きガイドを作る等の工夫で、廃棄物を排出する人全員が迷うことなく正しく分別できるようにしましょう。
買い物で実践できるアイデア
コンビニやスーパーで購入するレジ袋やペットボトル飲料、包装紙などは、包装容器がすぐにごみになりやすい特徴を持っています。これらの包装容器の使用量を減らすために、マイバッグやマイボトルは非常に手軽かつ有効な手段です。
デザイン性の高いマイバッグ、マイボトルも増えており、ゼロ・ウェイストの取り組みの第一歩としておすすめの活動です。また、過剰包装を積極的に断ることも、誰でも簡単にできる、非常に大切な取り組みといえます。
ファッションで実践できるアイデア
私たちの生活の中で、服は必要不可欠なアイテムです。着なくなった服を捨ててしまうのではなく、古着店を通じたリユース、ほつれた部位の修理(リペア)などを通じて長く使えるようにする活動をしてみましょう。
また、服を新たな繊維にリサイクルする取り組みも始められており、自治体や小売店に設置された服のリサイクルボックスを積極的に活用することも大切です。
ゼロ・ウェイストで廃棄物が発生しない世の中を実現する
この記事ではゼロ・ウェイストの定義や考え方、実践方法について詳しく解説しました。日本国内でも20年以上前から複数の自治体が「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、推進されてきています。分別ルールを徹底する、マイバッグやマイボトルを持ち歩く、服のリサイクルボックスを活用するなど、日々の小さな選択がゼロ・ウェイストにつながる一歩になります。
ちなみに、帝人フロンティアの「エコペット」は、マテリアルリサイクルおよびケミカルリサイクルを用いて生まれ変わらせた原料を使用したリサイクルポリエステル繊維です。リサイクル素材を積極的に取り入れることも、ゼロ・ウェイストに貢献するアクションといえるでしょう。