プラスチックはどうやって生まれた? プラスチックの歴史と現在の課題

プラスチックと地球

私たちの生活になくてはならないプラスチック。天然素材しか存在しなかった時代に、プラスチックの誕生は私たちの暮らしを大きく変えました。しかし、一体どのようにしてプラスチックは世の中に誕生したのでしょうか。
この記事ではプラスチックの原点から、汎用プラスチックの発明と普及、そして今私たちが直面する社会課題について解説しています。プラスチックの歴史を知った上で、現在と未来を作る基盤としていきましょう。

プラスチックの原点

プラスチックは一体どのようにして世の中に誕生したのでしょうか。その原点に迫っていきましょう。

プラスチックとは

プラスチックとは、一般的に「主に石油に由来する高分子物質(主に合成樹脂)を主原料とした可塑性の物質」と定義されます。もともとギリシャ語の「plastikos:可塑性のある」という形容詞があり、それが語源になったと言われています。
可塑性とは「固体に力を加えて変形させ、その力を取り去っても元に戻らない性質」のことです。代表的なプラスチックである熱可塑性樹脂は、熱を加えて液状化または軟化させ、変形させた後に冷却して目的の形状に成形します。なお、合成繊維もプラスチックの一種であり、樹脂を繊維形状に成形した素材です。

天然樹脂の活用

ラスチック(合成樹脂)が生まれる以前でも「樹脂」は古くから活用されていました。
「樹(き)」の「脂(あぶら)」と書くように、主に植物から採取される素材のことで、今では合成樹脂に対して「天然樹脂」と呼ばれています。例えば、天然ゴム、漆(うるし)、松脂(まつやに)などです。なお、3000年以上前の遺跡からゴム球が見つかっていることもあり、はるか昔から私たち人類にとって身近な素材であったといえます。

セルロイドの発明

世界で初めて工業生産されたプラスチック(合成樹脂)は、1869年にアメリカで開発され、量産された「セルロイド」と言われています。元々はビリヤード球の素材であった象牙が手に入りにくいことから、その代替素材として開発されたものです。
発明者はハイアットという人物で1870年に特許化された後、工業生産が進みました。当初の目的であったビリヤード球には普及しなかったものの、さまざまな日用品で幅広く使われるようになりました。

五大汎用プラスチックの発明

日常の中で幅広く使われているプラスチックは「五大汎用プラスチック」と呼ばれています。それぞれのプラスチックがどのように発明され、普及したのかを解説していきます。

ポリエチレン

ポリエチレン(PE)は五大汎用プラスチックの中で最も生産量が多く、世界で広く使われているプラスチックです。日本国内での年間プラスチック生産量の約25%である約200万トン(2024年のデータ)がポリエチレンです。
1933年にイギリスのICI社の研究所で偶然発見され、1937年にイギリスとアメリカの特許を申請したことで世界に知られるようになりました。現在では、ポリエチレンは主に食品包装フィルム、レジ袋、ポリタンク、パイプなど日常のさまざまな場面で使用されています。

参考サイト:プラスチックの種類別生産量|塩ビ工業・環境協会

ポリプロピレン

ポリプロピレン(PP)は2番目に生産量が多い五大汎用プラスチックで、日本国内での生産量はポリエチレンとほぼ同じ約200万トン(2024年のデータ)です。ポリプロピレンは1954年にイタリアのナッタ教授により発見・合成されました。
ポリエチレンよりも比重が軽く、耐熱性や剛性にも優れている上に、他素材との共重合や複合化などによる品質の多様化や高性能化が可能で、非常に柔軟性に富んだ素材といえます。現在では、自動車部品、家電製品の筐体、医療機器などに広く利用されています。

参考サイト:プラスチックの種類別生産量|塩ビ工業・環境協会

ポリ塩化ビニル

ポリ塩化ビニル(PVC)は、五大汎用プラスチックの中で最も古い歴史を持ちます。日本国内の年間生産量は約150万トン(2024年のデータ)です。
ポリ塩化ビニル自体は1835年にフランスですでに発見されていましたが、本格的な工業生産が始まったのは1935年のドイツと言われています。ポリ塩化ビニルは燃えにくさと耐久性、加工性などに優れているため、水道管や建材、ホース、農業用シートなどに幅広く使われています。

参考サイト:プラスチックの種類別生産量|塩ビ工業・環境協会

ポリスチレン

ポリスチレンは4番目に生産量の多いプラスチックで、日本国内の年間生産量は約130万トン(2024年のデータ)です。ポリスチレンもポリ塩化ビニルと同様に1830年代にドイツで発見はされていましたが、本格的に工業化されたのは1930年代のドイツおよびアメリカといわれています。
ポリスチレンは広範囲な用途に使用されますが、特徴的なプラスチックとしてはポリスチレン発泡体があります。発泡体の断熱性を生かして、カップ麺容器やコンビニ弁当の容器、建材ボードなどに利用されています。

参考サイト:プラスチックの種類別生産量|塩ビ工業・環境協会

ポリエチレンテレフタレート(PET)

ポリエチレンテレフタレート(PET)は、五大汎用プラスチックの中で5番目の生産量を有し、日本国内の年間生産量は約63万トン(2024年のデータ)です。
PETは1941年にイギリスで発明され、1948年にポリエステルとして市場に登場しました。代表的な用途にPETボトルがあり、私たちの身近な場所で使用されているプラスチックです。また、合成繊維やテープ素材など幅広い用途に使用されています。

プラスチックの爆発的な普及と課題

プラスチックが発明された後、社会に普及するきっかけとなった出来事がありました。そのきっかけと、普及したことで生じた課題に焦点を当てて解説します。

第二次世界大戦後の普及

第二次世界大戦による金属不足の中で、その代替材としてプラスチックが大量に利用されていました。その後、プラスチックの利便性が幅広く認識されるにつれ、先進諸国を中心として1950年頃より急速に普及しました。
現在、世界のプラスチック生産量は年間4億6,000万トンにまで増加(2019年のデータ)しています。

参考サイト:Global Plastics Outlook|OECD

環境問題とリサイクル技術

プラスチックの普及によって私たちの生活は便利になりましたが、その一方で廃棄プラスチックの問題が顕在化しました。例えば、石油資源を原料とする点からプラスチックの大量生産は資源の枯渇につながります。また、自然界での分解がほとんど見込めないプラスチックの埋立・焼却処理のために、焼却場や最終処分場の不足も深刻化しています。
自然界に放出されたプラスチックが海洋プラスチック汚染につながることも、社会問題の一つです。これらの背景などを受けて、課題解決の方法の一つとしてプラスチックのリサイクル技術(マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル)が発達してきました。

持続可能な社会に向けて

大量のプラスチック生産・消費に伴う環境問題は、放置すれば将来の社会に大きな影響を与えかねません。今後の社会や経済のあり方として、エレン・マッカーサー財団によって説明された「バタフライダイアグラム」で示しているサーキュラーエコノミーへの移行が求められています。サーキュラーエコノミーでは「再生可能資源」と「枯渇資源」が循環する仕組みの構築を目指しています。
プラスチック等の枯渇資源は、使用した後に長寿命化、再利用、改修、リサイクルなどのサイクルを繰り返して、廃棄物にせず循環させる概念です。

参考サイト:サーキュラーエコノミーについて|経済産業省・環境省

ちなみに、帝人フロンティアの「エコペット」は使用済みペットボトルや繊維くず等を原料としたリサイクルポリエステル繊維素材です。バタフライダイアグラムにおける、「リサイクル」に該当するサイクルを担っている素材と言えるでしょう。

世の中を便利にしたプラスチックと持続可能な未来を描く

この記事ではプラスチックが生まれた原点や、現在で幅広く使われている汎用プラスチックの発明秘話、そして今直面している社会課題、環境問題などについて掘り下げて解説しました。
プラスチックは多くのメリットをもたらしましたが、今、私たちはその負の側面にも向きあっていかなければなりません。歴史を知ることは、この素材との未来を考える第一歩ともいえます。この記事で得た知識を活かして、プラスチックとの持続可能な関係を築いていきましょう。

帝人フロンティアのリサイクルポリエステル繊維「エコペット」は、使用済みペットボトルや衣料品、繊維くず等を再生したサステナブル素材です。使用済みペットボトルはマテリアルリサイクル工程を経て、繊維くずや衣料品はケミカルリサイクル工程を経ることで繊維として再生し、身近な衣料品やバッグ、インテリアなど幅広いアイテムに生まれ変わります。
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