意外と知らない? ポリエステル繊維の特徴を詳しく解説
ポリエステル繊維は私たちの身の回りにある多くの製品に使われている素材です。洋服、布団、家具、など……日常を快適に送るのに欠かせません。一方で、いくつかのデメリットも存在しています。この記事では、ポリエステル繊維の特徴やメリット・デメリットを解説し、素材について正しく理解するための情報を提供します。
ポリエステル繊維ってどんな素材?
ポリエステル繊維という言葉を聞いたことはあっても、具体的にどのような素材なのか説明できる人は少ないはず。ポリエステル繊維の基本について解説します。
ポリエステル繊維の種類
ポリエステル繊維といえば、合成繊維の中でも一番の生産量を誇る繊維素材です。実はポリエステル繊維には、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)など複数の種類があります。ただし、一般的にポリエステル繊維といった場合には、最も生産量の多いPETのことを指します。
ポリエステル繊維の原料
ポリエステル繊維を製造するための原料には、主に石油資源が利用されます。石油から「キシレン」と「エチレン」と呼ばれる成分を抽出し、化学合成により「テレフタル酸」と「エチレングリコール」を作ります。この2つの物質を重合(化学反応)し、ポリエチレンテレフタレートを生産。これを熱で溶かして、多くの小さい穴が空いたノズルから押し出して繊維化し、冷却するとポリエステル繊維が生産できます。
ポリエステル繊維のメリットとデメリット
ポリエステル繊維の特徴をメリットとデメリットに分けて、それぞれ解説します。
強度が高い/毛玉ができやすい
ポリエステル繊維は他の繊維と比較しても、強くて切れにくい性能を持っています。そのため、ポリエステル繊維製の洋服は破れにくくて丈夫で、体操服や制服など耐久性や強度が求められる洋服に使われることも多くあります。また、洋服だけではなく産業資材など高い強度が求められる用途でも幅広く利用されています。
しかし、強度が高いことは実はデメリットにもつながります。例えば、ポリエステル製の洋服の場合、切れた糸が脱落しにくく、毛玉ができやすい性質も……。これを解決するために、毛玉が脱落しやすくするような加工をする場合もあります。
速乾性がある/汚れを吸着しやすい
ポリエステル繊維を含めて合成繊維の多くは水分を含みにくい性質(疎水性)を持ちます。そのため、洗濯した後の乾きが速かったり、汗や水分に触れるとすぐに拡散して発散できたりすることから、スポーツウエアなどに利用されています。
水分を含まない反面、油とは相性が良いため、特に油汚れや皮脂汚れなどを吸着しやすい傾向にあります。撥油加工を施していれば、このデメリットを解消することが可能です。
耐久性が高い/自然界に残留する
ポリエステル繊維は耐久性が高いため、洗濯を繰り返したり、日光下に置いたりしても劣化しづらく、長く使用し続けられます。ポリエステル繊維素材の洋服であれば、お気に入りの一着を長い期間楽しめることでしょう。
しかし、もし自然界にポリエステル繊維が流出してしまった場合、その耐久性故に非常に長い間、自然には分解されません。不要になったポリエステル繊維素材の洋服は、リサイクルや適切に廃棄処分することが大切です。
ポリエステル繊維のサステナブルな特徴
最近のポリエステル繊維には、持続可能な社会に貢献できる特徴を持ったものも増えています。詳しくみていきましょう。
植物由来の原料から製造できる
従来のポリエステル繊維は100%石油を原料として製造されていました。近年では技術の発展により、ポリエステル繊維の原料のうち「エチレングリコール」を植物由来で製造することができるようになりました。植物由来の割合は30%程度ですが、今後は「テレフタル酸」も植物由来にできるように技術開発が進められています
リサイクル原料から製造できる
一般的にごみの排出量を減らすために「3R+Renewable」の取り組みが重要とされています。既に現在、多くの繊維は廃棄する予定の製品をリサイクルによって新たな製品へと生まれ変わらせることができます。なお、「エコペット」も廃ペットボトルや繊維くずを原料にリサイクルされたポリエステル繊維です。環境負荷の少ない繊維として洋服や寝具、カーテンなど日常のあらゆるシーンで利用されています。
まとめ
この記事では、私たちの生活に身近なポリエステル素材の特徴を詳しく解説しました。強度、速乾性や耐久性など、多くのメリットを持つ素材です。
最近では、植物由来ポリエステルやリサイクルポリエステルなど、サステナブルな選択ができるようにもなってきています。