Interview

美しい素材感で人気のブランド「SIWA|紙和」の強さを支えるECOPET®
その可能性と、環境配慮への思いとは

山梨県の和紙メーカーである大直が和紙漉きの製法を応用して作りあげた、
紙のような見た目でありながら破れない素材、「ナオロン」。当初は障子紙として用いられるのみだった「ナオロン」は、その美しい素材感が山梨出身のプロダクトデザイナー・深澤直人氏の目に止まり、
トートバッグやポーチ、ブックカバー、さらにマスクまで、独特の皺と佇まいで人気となるブランド「SIWA | 紙和」を生み出すこととなる。

さらに大直はECOPET®を素材の一部に採用した「ハードナオロン」も開発。見た目の想像を超える強さを持つその素材は、ファッションや小物の分野のみならず、さまざまな可能性を秘めている。

「SIWA| 紙和」ブランドが生まれるまでと地球環境への思いについて、
製造元である大直のSIWAブランドプロデューサー・一瀬愛さんに話を聞いた。


− 「SIWA」はどのように生まれたのでしょうか。

弊社がある山梨県市川三郷町は千年続く和紙の産地。その主産品である障子紙は、日本の約半分の生産を担っています。弊社はこれまで障子紙と日本の歳時記などをテーマにした和紙商品ブランド「めでたや」を開発販売してきました。そして2008年に新たな顧客と海外マーケットの開拓を視野に入れた和紙商品を作りたいという思いから、新商品の開発をスタートさせました。

伝統的な和紙という素材が醸す世界観に囚われず、和紙製品の新たなカテゴリー開発の発想ができるクリエーターをということで、工業デザイナーの深澤直人さんにお願いさせて頂き、一緒に商品づくりを行うことになりました。

深澤直人さんは、弊社の開発した多くの素材の中から主に障子紙として商品化されていた破れない和紙素材「ソフトナオロン」を選び出し、そこに新しいデザイン価値を吹き込むことで生まれた商品群が「SIWA| 紙和」ブランドの商品となりました。

− その後、ECOPET®を採用した「ハードナオロン」も生まれるのですね。

2008年にブランドスタートした時点では、木材繊維とポリエステル繊維の混抄和紙「ソフトナオロン」を使って染色、縫製を行い、バッグや小物等の商品づくりを行ってきました。さらに強度が求められるランドリーボックスやバックパックなどの商品を開発するにあたって、「ソフトナオロン」より引き裂き、破裂強度のあるポリエステルを使った素材を研究していたところ、帝人様が開発したリサイクルポリエステル繊維、ECOPET®に行き着いたのです。その後、バージンポリエステル繊維とリサイクルポリエステル繊維であるECOPET®を混抄した100%ポリエステル繊維和紙「ハードナオロン」を開発し、新たな「SIWA| 紙和」商品の生産を始めました。

− それ以降10年以上の間、ECOPET®を使用し続けていますが、その理由などはあるのでしょうか?

とくに素材を変更する理由がなかった、というのが正直なところです。また、お客さまもリサイクルポリエステル繊維を使用していることに興味をお持ちでなかったように思われたこともあり、使用当初から2019年まではECOPET®を使用しているということは特別PRしていませんでした。しかし、ここ1〜2年の間で世界的にSDGsなど環境への取り組み意識が強くなるとともに、日本国内でも若い世代などから環境配慮商品の購入指向も高まってきており、弊社もSIWA商品はリサイクル繊維ECOPET®を使用した商品であるという説明を積極的に行っています。

− 御社のホームページには、リサイクルペットボトル原料使用100%に向けて取り組んでおられるとあります。その思いについてお聞かせください。

地球環境の改善や維持にふさわしくない素材を使用した商品開発には、未来がありません。今後さらに環境負荷の少ない素材を使用した製品作りを行っていくことで、循環型環境を目指すこれからの社会に積極的に適応していきたいと考えています。

− 大直でのサスティナブルな取り組みは何ですか?

弊社は和紙製品メーカーではありますが、和紙素材の非木材天然繊維を東南アジアを中心に海外からも調達・開発してきました。国内においては和紙になる植物は楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)と限られた種類しかありませんが、アジアに目を広げると、アバカ(フィリピン)、ダフネ(ブータン)、ロクタ(ネパール)パイナップル、バナナ繊維等があります。弊社は日本の和紙技術をアジア各国に伝えるとともに、その国の風土に合った紙づくりを行ってきました。

さらに、使い捨てではなく長く使えるもの作りも重要視しています。ECOPET®を使用した「ハードナオロン」のような強度のある紙の開発もその取り組みの1つです、SIWAのバッグは製品の修理なども行ない、和紙ならではの味のある製品として愛着を持って長くお使いいただくことが可能です。

また今後の課題にはなりますが、破れたり壊れて使えなくなってしまった製品を回収し、次の新しい製品へ作り替えることができる製品開発も行っていきたいと考えています。

− 「SIWA| 紙和」の特徴や良さについて

「SIWA| 紙和」は老若男女問わず幅広い年齢層の方々からご愛用頂いており、人それぞれ良さの見出し方もさまざま。おもな特徴としては軽さ、経年変化の楽しさ、シンプルなデザインですが、驚くほど軽い上にコシがあり自立するという点はSIWA製品ならではのものです。また、皮製品を使いたくないというお客様も多くなってきている中、使い込むに従い変化していく和紙という素材の新しい価値を発見して頂けているのではとも思います。さらに深澤直人さんならではのシンプルで使いやすい独特のデザインにより、工業製品では得られない手作りの温かみを感じさせる工芸製品になっていると思います。

− 今後の「SIWA| 紙和」の展望をおきかせください。

100%エコペットの「ハードナオロン」を使った製品開発は直近の課題です。SDGsの目標の17にもある「パートナーシップで目標を達成しよう」の項目にも当てはまりますが、帝人様との協業により世界に誇れる製品開発を目指していきたいと思います。また、お客様にも「エコペット」についてもっと知って頂くための機会も作りたいですね。そのことにより、日々のゴミ出しや、製品を購入する際にどうすればいいのかを考えるきっかけに必ずつながると思います。環境問題への取り組みは、普段の暮らしの中で当たり前のように参加していくことが大切だと思います。弊社としても環境問題への意識を持ちながらお客様と一緒に取り組むことで、より一層支持されるブランドになるようこれからも進めてまいりたいと思います。

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