今さら聞けない? アップサイクルとリサイクルの違いを詳しく解説

環境に配慮した行動が私たち一人ひとりに求められる現在、「リサイクル」や「アップサイクル」といった言葉がよく聞かれます。どちらも環境に配慮した取り組みのため、「一体何が違うのか」と疑問に思う人も多いでしょう。実は、この二つの言葉には明確な違いがあるのです。
この記事では、「リサイクル」と「アップサイクル」の基本を押さえた後に、複数の視点から違いを浮き彫りにしていきます。
アップサイクルとリサイクルの基本
アップサイクルとリサイクルの違いを明らかにするために、それぞれの定義を比較してみましょう。
アップサイクルとは?
アップサイクル(Upcycle)の定義は「使われなくなった製品や素材を使って、より価値のある製品に作り替えること」です。主に「価値向上」という面に重点が置かれており、機能面やデザイン面などで魅力を付与する取り組みといえるでしょう。また、最小限の加工で製品化することも多く、大規模な工場プロセスではなく、中小企業や個人レベルでも行える点も特徴です。
リサイクルとは?
リサイクル(Recycle)とは、不要になった製品を回収、分解して「原材料やエネルギー源」として有効利用することを指します。私たちは生活する上で多くの廃棄物を排出していますが、リサイクルによって廃棄物を有効利用することは、焼却・埋め立て処分されるごみの量を減らし、資源の有効活用と環境保全の両立につながります。
アップサイクルとリサイクルの共通点
アップサイクルとリサイクルはどちらも、「焼却・埋め立て処分される廃棄物の量を減らす」という効果があります。どちらも資源をできるだけ長く活用する仕組みの一つであり、私たち一人ひとりがモノを捨てずに活かす選択を意識することで、その流れを支えることができます。
世界的に見ても、日本国内でも、ごみの大量廃棄は重大な環境問題になっています。ごみ問題や削減の取り組みについては下記の記事でも紹介していますので、是非ご覧ください。
アップサイクルとリサイクルを複数の視点で徹底比較
アップサイクルとリサイクルの違いを、さらに具体的に掘り下げて解説していきます。
製品価値の変化の違い
アップサイクルもリサイクルも、不要になった製品を利用する点で共通していますが、アップサイクルは元の製品よりも「高い付加価値を持つ」点が重要なポイントです。価値の高め方はさまざまですが、例えばストーリー性やデザイン性を持たせることなどが挙げられます。
一方のリサイクルは、素材として再利用することで資源を無駄にせず、環境への負担を減らすことを目的とした取り組みです。製品としての新しい価値づくりよりも、資源を活用し、再利用することに重点が置かれているのが特徴です。
加工プロセスとエネルギー、技術、コストの違い
リサイクルの方法にはマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルなど種類があります。しかし、どちらの方法でも不要になった製品の破砕・溶融や化学分解など、エネルギーやコストがかかるプロセスが必要です。
これに対してアップサイクルは、元の素材を活かしながら最小限の加工プロセスで済みます。例えば、切断、縫製、接着、乾燥、組み合わせなどの加工方法が挙げられます。アップサイクルはリサイクルよりも少ない消費エネルギーで、新たな価値を与える点が特長です。
必要な廃棄物の量
リサイクルとアップサイクルでは、活用される廃棄物や不要物の扱い方に違いがあります。リサイクルは、分別回収や再資源化の工程を経て新たな原料に再生する仕組みであり、一定の量をまとめて効率的に処理するケースが多いのが特徴です。
一方、アップサイクルは必ずしも大量の素材を必要とせず、少量の不要品や廃材からでも、新しい価値を持つ製品を生み出すことができます。量よりも発想やデザインの工夫が重視される点が大きな違いです。
繊維製品のアップサイクルとリサイクルの具体的な事例
実際に取り組まれている具体的な事例を、アップサイクルとリサイクルに分けることで、その違いを明らかにしていきます。
ペットボトルから繊維へ
私たちが日常で使うペットボトルは、適切に分別・回収されることで新たな資源として再利用されます。なかでも、使用済みボトルを再びボトルへ再生する「ボトルtoボトル」の取り組みが主流となり、国内では約30%を占めるまでに拡大しています。
一方で、回収されたボトルをポリエステル繊維などに再生する「ボトルtoファイバー(繊維)」も約7%と一定の割合を維持し、衣料品や日用品への再利用として重要な役割を果たしています。日本のペットボトル全体のリサイクル率は約85%(2023年)と高く、資源循環が着実に進んでいます。
帝人フロンティアの「エコペット」はリサイクルポリエステル繊維の一つです。使用済みペットボトルはマテリアルリサイクル工程を経て、ポリエステル繊維くずや衣料品はケミカルリサイクル工程を経て、それぞれ「エコペット」に生まれ変わっています。
裂織(さきおり)でよみがえる古着の魅力
捨てられるはずだった古着や布を裂き、織り直して新たな製品に生まれ変わらせる取り組みはアップサイクルの一つと言えます。ボロボロになって着られなくなった古着でも、使われている生地にはまだまだ価値があります。布を裂いて織る技術は「裂織(さきおり)」と呼ばれ、日本で古くから存在する伝統技法です。
異なるデザインや質感の生地を使ったファッションアイテムや絵画は、他には無い希少性の高いアイテムになります。この取り組みを「リメイク」と呼ぶ場合もありますが、リメイクは製品価値の向上を必ずしも求めません。アップサイクルは製品価値を向上させる創造的なリメイクの一つとして位置付けられるでしょう。
在庫衣服を新たな製品へ
衣料品業界では、まだ着られるのに廃棄されてしまう「ファッションロス」が問題となっています。これはトレンドの変化による売れ残りだけでなく、過剰生産や返品・在庫処分などによって発生する衣料廃棄の総称です。
そのような中、廃棄されてしまう服を「黒く染める」ことで新たな製品にアップサイクルした事例もあります。「黒色の魅力」を取り入れながら、社会問題の解決にもつながった事例といえるでしょう。
参考:適正在庫とアップサイクルによる大量廃棄問題の解決に向けた取組事例|環境省
アップサイクルは価値の向上、リサイクルは再資源化
この記事ではアップサイクルとリサイクルの定義や違いを、比較しながら解説しました。リサイクルが「再資源化」によって大量の廃棄物を処理するのに対し、アップサイクルはモノに「新たな価値」を付与する活動です。
どちらも環境に配慮した取り組みですが、役割は少し異なります。「捨てる」選択をする前に、リユース、リメイクはじめ、アップサイクルやリサイクルという選択肢がないかを考えることで、より環境に優しいアクションができるようになるでしょう。
帝人フロンティアのリサイクルポリエステル繊維「エコペット」は、使用済みペットボトルや衣料品、繊維くず等を再生したサステナブル素材です。使用済みペットボトルはマテリアルリサイクル工程を経て、繊維くずや衣料品はケミカルリサイクル工程を経ることで繊維として再生し、身近な衣料品やバッグ、インテリアなど幅広いアイテムに生まれ変わります。